突然ですが皆さんは、夜寝る前に「今日のあの言葉、言わなきゃよかったな」とか、「明日、うまく話せるかな」と考えて、なかなか眠れないということはありませんか?
あるいは、「将来どうなるんだろう」「失敗したらどうしよう」と心配して、胸が苦しくなったことはないでしょうか。
私たちはつい、「過去のこと」や「まだ起きていない未来のこと」を頭の中で何度も考えてしまいます。
でも、そんな風に考えすぎることで、かえって心が疲れてしまうことがあります。
そんな時に助けになるのが、エックハルト・トールという作家が書いた本『The Power of Now(いま、この瞬間を生きる)』です。
この本は、「考えすぎて苦しい人たち」に向けて書かれた、心を軽くするためのメッセージのような一冊です。
こんな方におすすめ
- 常に疲れている人
- 人生を楽しめていないと感じている人
私自身、最近なんとなくだるいとか、常に気持ちが晴れないという状態が続いていました。
というのも、ふと気づくと仕事のことを考えていたり、嫌な出来事をずっと思い返していたのです。
仕事をしていない時間でさえ仕事に支配されているような感じで、疲れが抜けずやる気が出なくなっていました。
「考えすぎる心」がつくり出す苦しみ
エックハルト・トールという作家が書いた本『The Power of Now(いま、この瞬間を生きる)』の中で、トールはこう言います。

つまり、人間は「いま」ではなく、「過去」と「未来」にとらわれて苦しむ、ということです。
たとえば、
- 過去に友達と喧嘩をしたことを何度も思い出して落ち込む。
- テストの結果を心配して何も手につかない。
- 将来のことが不安で、夜も安心して過ごせない。
これらはすべて「いま」ではなく、「もう終わったこと」や「まだ来ていないこと」を考えている時間です。
そして、考えれば考えるほど、心はどんどん不安でいっぱいになっていくのです。
「今」に意識を向けると、心は落ち着く
トールはこう言います。

それを彼は「プレゼンス(presence=存在)」と呼びます。
たとえば、次のような場面を想像してみてください。
- 朝、空を見上げて、青空の色をゆっくり感じる。
- 食事の時、よく味わって「美味しいな」と感じる。
- 友達と話しているとき、スマホを見ずに目を見て話を聞く。
それはどれも「いま」に集中している状態です。
「いま」に集中しているとき、人は不思議と「不安」や「後悔」を感じていません。
なぜなら、不安も後悔も、「いま、ここ」には存在しないからです。
「いま、この瞬間」にちゃんと気づいていれば、心は静かになり、頭の中のざわめきが落ち着いていく。
それがトールの言う「いまを生きる力」なのです。
「思考」と「自分」は違う
トールがとても協調している考え方があります。
それは、「自分の頭の中の“考え”と、”本当の自分”は別物だ」ということです。
たとえば、心の中で「失敗したらどうしよう」と思ったとき、多くの人はその不安な考えを「自分そのもの」だと思ってしまいます。
でもトールは言います。

これは少し難しく聞こえるかもしれませんが、こういうことです。
たとえば、心の中で「うまくいかないかも」と考えても、その考えを「気づいて見ている自分」がいます。
その”見ている自分”こそが本当のあなた。
だから、頭の中のネガティブな声に引きずられる必要はないのです。
「いま、この瞬間」を生きる
そうはいっても、頭が勝手に考えてしまったり、そもそも思考を止めることはできないですよね。

勝手にネガティブなことを想像しては不安になったり、落ち込んだり、、
このような、「頭の中のネガティブな心の声」を止める方法はあるのでしょうか。
「心の中の声」と距離をとる練習
ここでトールは、心の中でずっとしゃべり続けている「内なる声(mind)」に気付くことが大切だと言います。
たとえば、歩いているときに「今日の授業いやだったな」「あの子、なんであんなこと言ったんだろう」と、頭の中でずっとおしゃべりしているときがあります。
でも、その声を止めようとしても止まりません。
だからトールは、止めようとするのではなく、「それを見つめる練習」をすすめます。
たとえば、こうしてみましょう。
- 頭の中に浮かんだ考えを、「あ、今私はこんなことを考えているな」と気づく。
- その考えを「ただの言葉」として眺める。
- それ以上、深追いしない。
こうして少しづつ「考え」と「自分」の間に距離ができると、考えすぎても巻き込まれなくなります。
まるで、流れる川を岸から静かに見つめるように、思考をただ眺めるのです。
過去も未来も「いま」の中にしかない
トールはさらに深いことを言います。

過去を思い出しているのも「いま」だし、未来を想像しているのも「いま」。
つまり、どんな時も人は「いまこの瞬間」にしか生きられないのです。
テスト前に「どうしよう」と不安になっても、その時できることは「いま勉強する」ことだけです。
友達とのトラブルを後悔しても、「いま話して謝る」ことが大切です。
未来を心配するより、「いまを丁寧に生きる」ことが、いちばん確かな道なのです。
考えすぎる自分を責めない
このように、「頭の中のネガティブな心の声」によって、私たちは意味もなく不安に押しつぶされそうになっているというのです。
しかし、ここで大切なのが「考えすぎることは悪い」と、自分を責めないこと。
もともと人間は、考える生き物です。
だから、考えてしまうのは自然なこと。
トールは本の中で、「思考を敵にしてはいけない」と言っています。
大事なのは、考えに気づくこと。
気づいたとき、はじめて私たちはそこから自由になれるのです。
”思考の外側”に出る

実際に、自分が不安や心配の渦中にあるとき、他のことは考えられないくらい自分の思考が支配されてしまいます。
たとえば、テスト前に不安で頭がいっぱいになった時、「いま、私は不安を感じているな」と気づくだけでいいというのです。
その気づきが、”思考の外側”に出る第一歩です。
「いまを生きる」ことで得られる力
では、「いま」に集中して生きると、どんな変化が起こるのでしょうか?
- 不安が減る:未来を考えすぎなくなることで、心が軽くなります。
- 人間関係がよくなる:相手の話をちゃんと「いま」聞けるようになり、思いやりが深まります。
- 集中力が上がる:頭の中が静かになると、勉強などにも集中できます。
- 小さな幸せに気づける:何気ない風や音、友だちの笑顔に心から「いいな」と感じられるようになります。
こうした変化は、すぐに起きるわけではありません。
少しずつ「いまを感じる練習」を続けることで、確実に心の質が変わっていきます。
「考えすぎない」実践方法
考えすぎないことで得られるメリットはとても多いことが分かりました。
しかし、無意識レベルで勝手に考えてしまうため、なかなかコントロールできません。


それでは、トールの教えを日常で活かすための、簡単な3つの習慣を紹介します。
「いま」を感じる時間をつくる
トールは言います。

沈黙とは、静けさを感じることだと言い、こうした時間の中では思考が静まり、心の底にある「穏やかさ」に触れることができます。
たとえば、
- 深呼吸をし、空気を感じる
- 公園で木の葉の音をじっと聞く
- 朝の光を浴びながら、言葉を手放す
「いま、ここ」にあるものをじっくりと観察する、その穏やかさの中でこそ、人は本来の力を発揮できるのです。
「考えすぎている」と気づいたら、手を止める
不安な考えが頭に浮かんだら、いったん「ストップ」と心でつぶやきましょう。
そして「これはただの考え」と気づくだけで、思考から少し距離が取れます。

ちなみに私の考えですが、たとえばゲームをしている時間などは、自分の思考が止まっているのではないかと思っています。
ですから、現代において、ゲームをしたりスマホを見るなどの時間は、考えすぎを止める方法の一つでもあると思います。
私も、グルグル思考がどうにも止まらなかったときは、よく本を読んでいました。
今回のエックハルト・トールが書いた本『The Power of Now(いま、この瞬間を生きる)』もその一つですが、本を読んでいる間は「考えすぎる」ことをストップできていたと感じます。
トールは本の中で「感謝を意識することで、自然にいまを感じられるようになる」と書いていますが、グルグルの渦中にあった頃は、感謝することができませんでした。
感謝どころか、不平不満や怒りすら感じていて、心に全く余裕がありませんでした。
朝起きた瞬間から、頭の中はいやなことで埋め尽くされ、感謝どころではありません。
世の中の理不尽さや、不当な扱いをされたことを思い起こしていたので、朝の新鮮な空気を感じる余裕は1ミリもありませんでした。
少しでも今の自分の環境から逃れたくて、本を読んでいたのですが、その間だけは心が平穏になっていくのを感じていました。
本を読む時間=心が平穏になる時間を増やしていくことで、徐々に「考えすぎない」ことができるようになりました。
【まとめ】考えすぎないで心を軽くする方法
『The Power of Now(いま、この瞬間を生きる)』の中で、トールは優しいメッセージを伝えています。

私たちは、未来のために努力したり、過去の経験から学んだりします。
それは大切なことです。
ですが、どれだけ考えても、私たちが生きられるのは「いま」しかありません。
だから、考えすぎて苦しくなったときは、深呼吸して「いま」を感じてみてください。

そのすべてが、「いま」を生きている証です。
考えすぎなくても、世界はちゃんと動いています。
そしてあなたも、その中でちゃんと生きています。
それに気づけたとき、心は静かに、やさしく軽くなるはずです。